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世界から向けられるインドネシアへの関心


 世界銀行は2018年6月6日、インドネシアの都市水道整備国家プロジェクト(National Urban Water Supply Project)に 1 億米ドルの融資を決定したと報じた(資料28)。(編者注:世銀が公表している詳細計画を見ると、世銀からの融資額1億ドルのほかに、借り手のインドネシア側が支出するプロジェクトコストが5億260万ドルあり、合計のプロジェクトコストは6億260万ドルとなっている。世銀の1億ドルは全額ローン。)融資の目的は、都市部6 百万人の人々に上下水道を普及させることで、インドネシア政府は世界目標の2030年を前倒しして2019 年までに飲料水(→SDG6.1)及び衛生(→SDG6.2)の目標達成を目指している。プロジェクトの対象は、40地方自治体およびその傘下の水道事業体である。
世界銀行はこの融資によりSDGsの目標の中で、発育不全や栄養失調などの人々の健康問題に対処し(SDG 3)、不平等を減らし(SDG 10)、都市化の完全な利益を人々が享受できるようにする基本的な公共サービスを提供する(SDG 3)効果を強調。その他のメリットには、地元の水道事業における人材能力の向上、気候変動に対するインドネシアの回復力の促進などがある。現在、インドネシア人のほぼ半数が安全な水を利用できず、70%以上が汚染されている可能性のある水源に依存している。

 アジア開発銀行(ADB)のRamesh Subramaniam東南アジア部門担当局長は、インドネシアに対して2019 年に 26 億米ドルの融資を約束した(フィジーで開かれたADB理事会で2019年5月1日発表)。その目的は、インフラストラクチャープロジェクトの開発が中心で、次の内容を含んでいる(資料83)。(編者注:この金額には上下水道以外のプロジェクトコストも含まれている。)
1. 大規模エネルギープロジェクトの資金調達支援。
1)送配電プロジェクト;6 億ドル融資。
   カリマンタン、マルク島(スラウェシュとパプアの中間)、パプアを対象
2)ガス火力発電所プロジェクト;5 億ドル(インドネシア国有電力会社PLN と協力)。
   スラウェシ、カリマンタンの東部および西ヌサテンガラ州
2. インフラストラクチャー資金融資機関 IIFF(プロジェクトへの資金提供)への支援
インドネシア全土、特に地方自治体レベルのエネルギー、廃棄物管理、上下水道・し尿処理等
3. 中央スラウェシの Palu 市に対する災害復旧支援への資金供給を検討中(5 月下旬理事会にて承認必要)。融資目的は、道路、水道・衛生設備、灌漑施設改善について、土壌液化現象による被害に対応するもの。
ADB は現在、19 のプロジェクト(39 億ドル)を運営しており、地方の 12 万世帯への電力供給支援、24,000 キロメートルの地方道路の改良等を対象にしている。

 これらに先立って、AIIB(アジア・インフラ投資銀行=中国が提唱し、主導する形で発足)は、インドネシアの灌漑を近代化するために 2 億 5000 万ドルの融資を承認したことを公表している(資料33)。
○目的;@インドネシアの水資源・灌漑施設の復旧、再生、近代化。 A灌漑に係る組織・制度の強化と、これらの施設の運転管理の改善。 資金は、世界銀行と共同で出資。
○プロジェクトの構成;
@面積 10 万ヘクタールの既存灌漑地域の劣化防止・再生
A南ジャワ州ジャティルフール、17.6 ヘクタールの灌漑・排水システムの近代化
Bプロジェクト管理の支援
★AIIB 出資決定の根拠;
@インドネシアの食糧安全保障と持続可能な農業開発の努力を支援し、補完できる。
AAIIB のコミットメント;インドネシアの経済成長と社会経済開発支援と合致。

 インドネシアは、2020年11月にバリで開催予定の第 2 回アジア国際水週間(AIWW)を主催することを2019年6月に発表したが、この企画には韓国とオランダが深く関係している(資料90)。
1.今後の会議予定とその準備に対するインドネシア公共事業・公共住宅大臣の発言。
 会議予定;第 2 回アジア国際水週間 AIWW(2020 年 11 月 3 日〜7日):
AIWW 開催準備のためのステークホルダー協議会;2019 年 11 月 11,12 日開催予定
★第 2 回 AIWW の準備に関し、公共事業・公共住宅大臣 BasukiHadimuljono は、
「イベントを成功させるためには、地方自治体と民間の利害関係者との間の協力が必要」
と述べ、災害リスクに対する国民の意識の高めることが重要であると付け加えた。
(2019 年 6 月 28 日)
2.覚書(MoU)(インドネシア公共事業公営住宅省、オランダ国インフラ水管理省及び韓国国際協力機構(KOICA)との間で締結。)について;
 覚書の調印は、首都沿岸総合開発(NCICD)フェーズ II への協力に関するもの。
2019年6 月 27 日、公共事業・公共住宅大臣(Basuki Hadimuljono)が声明を発表し次の様に述べた。
「韓国とオランダ政府の支援に対して感謝の意を表明する。インドネシアは洪水、海水の堤防越流、及び 12cm/年にも及ぶジャカルタの地下水位低下を防ぐためにこの覚書が必要であり、インドネシアは韓国からの専門知識と支援を必要としている。」
KOICA 会長の Lee Mi-Kyung は、「交通・水・環境等の分野における協力関係は長年継続しており、インドネシアは都市開発における共同パートナーある。」と述べた。
3. 首都沿岸総合開発(NCICD)について;
その目的は、社会経済面、都市計画面、環境面を総合した、戦略的・適応的な方法により、地盤沈下による北部ジャカルタの水不足や洪水リスクから首都ジャカルタを短期的、中期的、長期的に守る事である。
第 1 段階(フェーズT)では海に 20.1 キロメートルの堤防を建設し、洪水、満潮時の海水の越流、ジャカルタ市の地下水位の低下を防ぐために、特に脆弱な地域を保護する。
この応急的な堤防の建設は次の 2 つの事業によるものとされている。
@ 公共事業省事業(2018 年に完成した 4.5km の堤防の建設)。
A ジャカルタ州政府とその地域の民間の利害関係者による開発プロジェクト。

 日本政府は2020年3月27日、インドネシアの首都ジャカルタの下水道建設と、洪水制御強化に関する2案件に計 643 億 6,000 万円の円借款を実施すると発表した。石井正文駐インドネシア大使とインドネシア外務?アジア太平洋・アフリカ総局のデスラ・プルチャヤ総局長が交換公文に署名した(資料126)。
※外務省ホームページ(https://www.mofa.go.jp/mofaj/press/release/press4_008392.htm)に詳細情報。インドネシアに対する円借款 「ジャカルタ下水道整備計画(第 1 区)」及び「洪水制御セクター・ローン(フェーズ2)」に関する交換公文の署名 令和 2 年 3 月 27 日。 要点は以下の通り。
対象案件の概要(案件位置図(PDF)あり)
(1)ジャカルタ下水道整備計画(第 1 区)(供与限度額:570 億 6,100 万円)
ジャカルタ特別州中心部に位置する下水処理区である第 1 区において下水処理施設の建設及び下水管渠の整備等を行うためにインドネシア政府に資金を融資する。この計画の実施により,事業完成 3年後の 2028年には,2017 年の実績値と比較して,下水処理施設の便益を受けられる人口が 0 人から989,389 人に,下水処理能力が 0m3/日から 240,000m3/日に増加することが見込まれる。
(2)洪水制御セクター・ローン(フェーズ 2)(供与限度額:72 億 9,900 万円)
洪水被害に脆弱なインドネシアの主要地方都市において,洪水制御インフラ(河川堤防,護岸,排水ポンプ所等)の整備,流域管理事務所の組織能力強化等を行うためにインドネシア政府に資金を融資する。この計画の実施により,サブ・プロジェクトの実施地域で河川の水が正常に流れる能力を高めることによって,同地域における洪水被害の軽減等が見込まれる。

 一方、日本が関係した最近の水道関係の協力に関する情報では、JICA草の根技術協力事業を通じた地方自治体の活躍が注目される。それらには、豊橋市(ソロク市における浄水技術改善事業、2015〜2018、資料2など)、豊橋市(ソロク市における上水道給水サービス強化プロジェクト、2019〜2021)、川崎市(マカッサル市における地下漏水対策実行能力向上プロジェクト、2017?2020)、横浜市(メダン水道局における安全な24時間給水のための能力向上プロジェクト、2019〜2021)、浜松市(バンドン市における漏水防止対策技術支援、2016?2019)、浜松市(バンドン市に対し水道管路の維持管理のための点検技術に係る技術支援、2020〜2014、資料11)、宇部環境国際協力協会(宇部市や宇部市上下水道局の支援の下、山口大学工学部、地元企業、NPO等の協力を得て実施)による典型的な熱帯泥炭地リアウ州ブンカリス地区における水道水質の改善(2015?2018、資料18など)が含まれている。
また、JICA案件化事業を通じた民間企業の取組として、西ジャワ州ボゴール県水道公社を対象とした株式会社パイプデザイン(本社広島市)による維持管理ソフトウェアの導入による水道インフラ管理システムの高度化改善効果の実証調査(2015〜2016、資料1)、西ジャワ州バンドン県および周辺・PDAM Tirta Raharja Kabpaten Bandung(バンドン県水道公社)を対象とした東京水道サービス株式会社によるTSリークチェッカーを活用した上水道の無収水削減技術案件化調査(2017〜2018、資料3)、ブカシ市水道公社を対象とした:中里建設株式会社(本社栃木県佐野市)による都市給水の水質及び供給力を向上するためのアクアピグを利用した送配水管内洗浄案件化調査(2019〜2020、資料49)が実施されている。

 ところで、インドネシアの上下水道・廃棄物セクターにおいて、日本は上水道分野に始まり、時代ごとのインドネシア政府の政策に合わせた支援を行ってきた。1960年代初めに首都ジャカルタの上水道整備マスタープランを策定、1970年代には実際に上水道施設の施設整備を支援した。1980年代には「水道環境衛生訓練センター」を通じ、水道の設計・維持管理を行う人材育成支援も行った。1980年代以降、地方都市の上水道への協力も実施された。1990年代にはインドネシア政府の地域格差是正の政策を受け、地方小都市の上水道にも協力を行った。2000年代になると地方分権化の流れを受け、地方の水道公社の運営改善を支援した。

 日本のインドネシア国上水道セクターへの協力実績(技術協力を除く)は、JICA報告書によれば、(2013年までの)過去 39 年間で円借款 1225.12億円、無償資金協力 76.58 億円となっている。円借款は、ジャカルタ市、ウジュンパンダン市(現マカッサル市)やスラバヤ市等の大都市および地方中心都市の水道公社を対象に行なわれている。無償資金協力は、ジャカルタ市への供与は 1970 年代のみであり、それ以降はジョグジャカルタ特別州、東部のスラウェシ島、東西ヌサトゥンガラ州への支援が行なわれている。技術協力プロジェクトでは、水道・環境衛生訓練センターでの人材育成プロジェクト、無収水低減のための地方給水プロジェクトが実施されてきている。
 これらはいずれも大都市、地方都市を中心とした都市部での上水道事業を対象としてきている。村落部を対象としたものとしては「地方インフラ整備事業」がある。同事業は地方村落におけるインフラ整備(道路、橋、簡易上水施設、衛生施設、灌漑・排水施設)を目的としており、簡易上水道施設は基礎インフラの中の一つとして位置づけられていた。また、全国を対象としたものとしては「水道・環境衛生訓練センター・プロジェクト」と先の「地方インフラ整備事業」があり、それ以外はある一定の地域や都市を対象としたものとなっている。
我が国の援助を重点課題別、地域別に整理したものが次図である。


上水道セクター案件配置図(出典:JICA報告書2013年11月)

 この図から分かるように、協力案件の中心となってきたのは「上水道施設整備」であり、これは浄水施設の新規建設・拡張、修繕が主な対象となっており、それに付随して送配水施設も含まれているケースが多かった。1980 年代後半から「人材育成」、2000 年代に入ってから「無収水対策」をテーマとした支援が行なわれるようになった。
 こうした「上水道施設整備」を中心としたこれまでの支援は、給水量の増加、送配水管の更新による無収水量の低減、水質の向上に寄与してきている。その一方で、過去に協力してきたジャカルタ市水道公社が水道事業運営を民間企業に委託したり、地方分権化によって水道セクターの人材育成を取り巻く環境が大きく変化するなど、民営化と地方分権化の影響も受けてきている。
また、インドネシアでは、世界銀行(WB)、アジア開発銀行(ADB)、米国国際開発庁(USAID)、オーストラリア国際開発庁(AusAID)等を中心にさまざまなドナーが其々のアプローチで上水セクターの活動を展開している。各ドナーにおける活動の特徴は次表のとおりであるが、その中では、世界銀行が主導的な役割を果たしてきている。

           都市給水分野における各ドナーの活動と特徴

                                   出典:JICA報告書2013年11月

 「情報提供シリーズ」の関連記事は、たいへん多岐にわたっており、人口の増加や経済発展を続けるインドネシアに対して、世界各国が多大な関心を示していることがわかる。これらの記事を読むにあたっては、建国から今日までの発展過程の中で、世界のドナーが果たしてきた役割を念頭に置いておく必要がある。

情報提供シリーズの関連記事
世銀
資料24: インドネシアの上下水道の現状-世界銀行の2015年の報告書(2015年SDA分析)、2018年6月、joho24-20180602W.pdf
資料28: World Bank Approves US$100 Million for Water Supply in Indonesia、2018年7月、201807W01.pdf
資料50: Indonesia Investment Forum in Bali focuses on Infrastructure Financing(IMF/世銀)、2018年11月、20181101W.pdf
アジ銀
資料83: ADB commits US$2.6 billion to support Indonesia in 2019、2019年6月、20190601W.pdf
中国
資料33: AIIB Approves $250M Loan To Modernize Irrigation in Indonesia、2018年8月、20180801W_1.pdf
韓国・オランダ
資料90: Indonesia to host second Asia International Water Week(アジア国際水週間=KOICA、オランダ)、2019年7月、20190701W.pdf
オランダ
資料119: Ongoing WaterWorX Project in Indonesia Aims at Ensuring Connection toPoor Area by Means of Financing(スマラン、VEI(オランダ系水企業)、2020年2月、20200202W.pdf
日本:
資料1: 水道インフラシステムの高度化(JICA案件化)、2018年4月、joho1.pdf
資料3: TSリークチェッカー(JICA案件化)、2018年4月、joho3.pdf
資料2: インドネシア水道技術支援事業・豊橋市(JICA草の根無償)、2018年4月、joho2.pdf
資料6: ソロク市「奇跡の水道水」(豊橋市)、2018年4月、joho6.pdf
資料12: ソロク市における水道技術研修による実践的研究(豊橋市)、2018年5月、No.180503J.pdf
資料48: 「飲める水道水ができた!」インドネシアの奇跡 豊橋市上下水道局の挑戦、2018年11月、20181103-2J.pdf
資料11: 浜松市上下水道部 バンドン市を支援、2018年5月、No.180719_2R.pdf
資料20: 自治体水道事業海外展開事例集(川崎市・浜松市)、2018年6月、joho20.pdf
資料21: 水処理分野における中堅中小企業の海外展開(兵庫県)、2018年6月、joho21.pdf
資料18: JICA中国、インドネシア・ブンカリス島に安全な水道水を(宇部市)、2018年6月、joho18.pdf
資料47: 宇部市にインドネシアの職員ら、水道水質改善研修、2018年11月、20181103-1J.pdf
資料31: 北九州市海外水ビジネス推進協議会、2018年8月、20180801-2J.pdf
資料13: 平成 28 年度東南アジア地域水ビジネス案件発掘・形成調査業務(厚労省)、2018年5月、No.180504J.pdf
資料27: 「インドネシア」の水市場動向2015年〜2018年、2018年7月、20180701-3J.pdf
資料49: 栃木・佐野の中里建設、水道管事業で海外進出へ、2018年11月、20181103-3J.pdf
資料5: ASEAN水関連計画市場動向調査(JETRO)、2018年4月、joho5.pdf
資料10: ベトナム及びインドネシアにおける水ニッチビ ジネス展開に向けたプロジェクト具現化モデル調査(経産局)、2018年5月、No.180501J.pdf
資料68: 日本の水ビジネス企業の海外進出事例 調査レポート(2017年JETRO)、2019年3月、20190301-1J.pdf
資料126: 首都の下水道整備などに円借款 計644億円、2020年4月、20200401-2J.pdf
上記以外の参考文献
1) Indonesia - National Urban Water Supply Project, LOANS & CREDITS JUNE 6, 2018
https://www.worldbank.org/en/news/loans-credits/2018/06/06/indonesia-national-urban-water-supply-project
2) インドネシア共和国上水道セクターに係る情報収集・確認調査報告書、独立行政法人国際協力機構東南アジア・大洋州部、平成25年(2013年)11月、
https://openjicareport.jica.go.jp/pdf/12146197.pdf
3) JICA国別事業一覧【インドネシア】https://www.jica.go.jp/partner/kusanone/country/indonesia.html?
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